「なんにも用事がないけれど、汽車に乗つて大阪へ行つて来ようと思ふ」
との一文が印象的な『特別阿房列車』は、作家、内田百閒、昭和25年の作品。
電車に「乗ること」そのものが目的の、元祖「乗り鉄」が内田百閒、当時61歳だ。
産経新聞の前・論説委員長・乾正人(いぬいまさと)は、60歳。
「用事はないが、列車に乗りたい。どうしても」
還暦で子供返りしたのか、乾は駄々っ子のような衝動を真面目に企画書にしたためた。令和の御世に「阿房列車」を復活させよう、そうだ、タイトルは「令和阿房列車」だ!
「いいでしょう」
あっさりOKをだした編集局長。
まずは北へ。
9月、乾正人は新幹線「はやぶさ」グランクラスに搭乗し、威風堂々、稚内を目指した。
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